やさしいビタミンCの知識

ビタミンCとビタミンB12の食事摂取基準量は約40,000倍違う

私たちが毎日摂取している栄養素の中には,多量栄養素と微量栄養素があります.多量栄養素である炭水化物は,毎日1人当たり約250グラム(1,000 kcal),タンパク質は約70グラム(280 kcal),脂質は約60グラム(540 kcal)というグラム単位の多くの量を摂取しています.

一方,微量栄養素であるビタミンやミネラルはグラムの千分の一であるミリグラム単位あるいはグラムの百万分の一であるマイクログラム単位の量を摂取しています.

ビタミンには,脂溶性ビタミンとしてA,D,E,Kの4種類があり,水溶性ビタミンとしてはビタミンCを含む9種類があります.それぞれのビタミンの1日に摂取するべき量は,食事摂取基準として厚生労働省により定められています.ビタミン13種類の食事摂取基準をミリグラム単位で表1に示しました.


ビタミンCの食事摂取基準は,推奨量として成人(男性と女性ともに)で1日あたり100ミリグラムです.これは,13種類のビタミンの中で最も多い食事摂取基準量です.ビタミンB12の食事摂取基準は1日当たり0.0024ミリグラムと最も少ないです.ビタミンCの食事摂取基準量は,なんとビタミンB12の約40,000倍です.同じ水溶性ビタミンでも,食事摂取基準量にこれだけの差があります.

なぜ,ビタミンCはこのように多量に摂取しなければならないのでしょうか?その理由は,ビタミンCには,生体内で多くの生理機能があり,分解されやすいためかもしれません(「ビタミンCの分解(シュウ酸への代謝は?)」参照).ビタミンCは体内で主要な抗酸化物質のひとつです.そして,生体を酸化障害から守る際に分解されます.すなわち,ビタミンCは抗酸化物質として各組織では高濃度に保たれる必要があり,そのために多くの量を摂取しないといけないのかもしれません(「動物でのビタミンCの酸化・還元系」参照).

日本人がどれくらいのビタミンCを毎日摂取しているかについては,厚生労働省の令和元年度国民健康・栄養調査により報告されています.20~29歳男女の平均摂取量は,1日当たり62ミリグラムです.そして,60~69歳男女の平均摂取量は,1日当たり111ミリグラムです.このように,日本人はほぼ適切な量のビタミンCを摂取していますが,若い世代の人達はより多くのビタミンCを摂取することが推奨されます.

[堀尾 文彦]