やさしいビタミンCの知識

動物もビタミンCを作るの? なぜヒトは作らないの?

哺乳類はいろいろな動物種がいますが,ビタミンの定義からしても大部分のビタミンを合成することができません.しかし,ビタミンC(アスコルビン酸)は,ほとんどの動物種が合成することができます.事実,ウシもウマもウサギも,ラットもマウスもビタミンCを作ることができます.また,鳥類もほとんどの種がビタミンCを作ることができると考えられています.この「やさしいビタミンCの知識」の中の「ビタミンCってどんな構造?なぜグルコースに近いの?他に似たようなものってなに?」の項目において,ビタミンCの構造はグルコース(ブドウ糖)にとてもよく似ていることが図として載っていますのでご覧ください.グルコースは哺乳類の体内でとても重要なエネルギー源となる物質で,血液の中にも多く存在しており,その血中濃度は血糖値として知られています.そして,グルコースは哺乳類の体内でビタミンCを作る原料にもなるのです.哺乳類はこのグルコースからビタミンCを作る経路(ビタミンC合成経路)を持っています(図参照).経路中のそれぞれの物質は,酵素による反応によって作られていきます.哺乳類では肝臓において,この経路によりグルコースからビタミンCが作られます.

ところが,哺乳類の中で霊長類という仲間であるヒトやサルはビタミンCを体内で作ることができず,必須栄養素のビタミンとして,食事から摂取しなければなりません.霊長類はどうしてビタミンCを作ることができないのでしょうか?それは,ビタミンC合成経路の最後の反応を行う酵素であるグロノラクトン酸化酵素がヒトを含む霊長類では欠損しているからです.霊長類が長い時間をかけて進化してきた中で,この酵素の遺伝子に変異が起こり,この酵素を欠損してしまったと考えられます.



[堀尾 文彦]