ビタミンCには,還元型ビタミンC(アスコルビン酸,AsA)と酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸,DasA)があります(「ビタミンCの還元型と酸化型とは?」をご覧ください).その他に中間体のモノデヒドロアスコルビン酸(MDAsA)も存在しています.
アスコルビン酸は,がん,動脈硬化,アルツハイマー病,糖尿病合併症など多くの病気の要因である活性酸素種を除去します(「体の錆の原因である活性酸素種をしっかり取り去るビタミンC」をご覧ください).活性酸素種は,体の中のさまざまな成分(タンパク質,脂質,核酸など)を酸化し,生理機能の低下,病気の発症や進行,老化などを引き起こします.アスコルビン酸は,体の中の成分の代わりに自分が酸化されてデヒドロアスコルビン酸となり,活性酸素種を無害化しています.
また,アスコルビン酸は,間接的にも活性酸素種を無害化しています.活性酸素種から細胞膜の脂質の酸化を保護してるのは,ビタミンEです.ビタミンEは,脂質の酸化を防ぎ,酸化型となります.アスコルビン酸は,自分が酸化されることによりデヒドロアスコルビン酸となって酸化されたビタミンEを再生(還元)しています.
さらに,局所的な反応に注目すると,アスコルビン酸は鉄イオンや銅イオンを含有する酵素の機能を助けます.例えば,コラーゲン合成に重要なプロリル水酸化酵素は,2価鉄イオンが酵素の活性に必要です(「血管,皮膚,筋肉はなぜ硬くてしっかりしているの? ―コラーゲン合成とビタミンCの関係―」をご覧ください).酵素反応中に2価鉄イオンは3価鉄イオンに酸化されます.アスコルビン酸は3価鉄イオンを2価鉄イオンに還元し,酵素活性を維持するために働いています.その他,チロシン代謝(「アドレナリンやオキシトシンの生成におけるビタミンCの役割とは?」をご覧ください),カルニチン合成(「脂肪燃焼に必要なカルニチンとビタミンCとの関係は?」をご覧ください)などに関わる酵素の活性状態維持にも働いています.
アスコルビン酸は,上で示したように酸化状態のものを還元をして自分が酸化されてデヒドロアスコルビン酸となり,その後壊れていきます(下図).しかし,アスコルビン酸が働いたのち壊れるばかりかというとそうではありません.グルタチオンやNADPHを利用してデヒドロアスコルビン酸からアスコルビン酸を再生する酵素(デヒドロアスコルビン酸還元酵素)やNAD(P)Hを利用してモノデヒドロアスコルビン酸からアスコルビン酸を再生する酵素(モノデヒドロアスコルビン酸還元酵素)が体の中にあります.これらの酵素などの働きによって,ほとんどが還元型ビタミンC(アスコルビン酸)として存在しています.
[田井 章博]