ビタミンE(別名,α-トコフェロール)は,油に溶ける脂溶性ビタミンです.図1のように,ビタミンEはクロマンと呼ばれる環状部分に水酸基(-OH)が結合しています.この水酸基がある故にビタミンEは抗酸化力を持ちます.
ビタミンEは,主に脂質ペルオキシラジカルという物質を還元(水素原子(H)を供与)することにより,脂質の過酸化を防ぎます(図2).過酸化脂質が増えると,生体組織の損傷や動脈硬化を引き起こします.
脂質ペルオキシラジカルへ水素原子を供与したビタミンEは,ビタミンEラジカルとなり自身の抗酸化力を失ってしまいます.ビタミンCには,このビタミンEラジカルの抗酸化力を回復させるはたらきがあるのです.つまり,ビタミンCはビタミンEをリサイクルできます(図2)(「動物でのビタミンCの酸化・還元系」参照).
ではなぜ,水に溶ける水溶性ビタミンCが,脂溶性のビタミンEをもとの状態に戻すことができるのでしょか?細胞でのビタミンEは,細胞膜や細胞小器官の膜中に多く局在しています.そして,水溶性のビタミンCは,細胞膜表面に存在する脂溶性のビタミンEラジカルに水素原子を供与できます(図2).
また,水素原子を供与したビタミンCは,酸化型のビタミンCとなります.酸化型のビタミンCは,生体内の酵素により還元され,再び還元型のビタミンCになります(「ビタミンCの還元型と酸化型とは?」参照).
このように,ビタミンCはビタミンEを効率よく使うのに役立っています.正に縁の下の力持ちとしての面目躍如ということではないでしょうか.
[佐藤 綾美]