やさしいビタミンCの知識

皮膚でのビタミンCのはたらき

皮膚は,物理的な刺激や化学的な刺激から,私たちのからだを守ってくれる大切な臓器です.この皮膚において,ビタミンCはいくつもの重要な働きがあります.

1つめは,コラーゲン合成のサポートです.コラーゲンは,皮膚に弾力やハリを与えるタンパク質です.ヒトの体を構成する全てのタンパク質のうち,約30%がコラーゲンです.ビタミンCは,コラーゲンを形作る酵素がしっかり機能するように酵素をサポートします.ビタミンCとコラーゲン合成について,詳しく知りたい場合は,「血管,皮膚,筋肉はなぜ硬くてしっかりしているの? ―コラーゲン合成とビタミンCの関係―」もご覧ください.

2つめは,メラニン色素の産生を抑えます.メラニン色素は,ヒトの肌の色を決める因子のひとつです.このメラニン色素は,チロシンというアミノ酸が酸化されて,ドパ,ドーパキノンという物質を経て産生されます.メラニン色素の産生には,いくつかの酸化反応があります.ビタミンCは,還元作用がありますので,メラニン色素が産生される過程で起こる酸化反応を抑制することでメラニン色素の産生を抑えます.

3つめは,紫外線によるダメージから皮膚を守ります.紫外線を浴びるとからだの中で活性酸素種が生じます.ビタミンCが持つ還元作用によって,この活性酸素種による有害な酸化反応を抑えます.ビタミンCの還元作用と活性酸素種について,詳しく知りたい場合は,「体の錆の原因である活性酸素種をしっかり取り去るビタミンC」もご覧ください.

ビタミンCは,皮膚にとって大切なビタミンなので,多くの化粧品に配合されています.しかし,ビタミンCにも弱点があります.それは,熱や酸素などで壊れやすいということと水溶性であるがゆえに皮膚に入りにくいということです.

そこで化粧品中のビタミンCは,この弱点を克服した“安定型ビタミンC誘導体”として配合されることが多いです.安定型ビタミンC誘導体について,詳しく知りたい場合は,「安定型ビタミンC誘導体って? 何に使えるの?」もご覧ください.さらに,安定型ビタミンC誘導体は,ビタミンCを壊れにくくしただけではありません.油に溶けやすくする性質など,これまでビタミンCが持っていない性質を持たせることもできます.つまり,化粧品に配合される安定型ビタミンC誘導体の種類によって効果が変わってくることにもつながります.安定型ビタミン誘導体の性質について,詳しく知りたい場合は,「ビタミンCと同じ働きを持つものにはどんなものがあるの?」もご覧ください.

最後に,皮膚の一番外側に位置する表皮は,ケラチノサイトという細胞で構成されます.ビタミンCは,このケラチノサイトが徐々に形を変えて角質となり最終的にはがれ落ちるまでの過程にも関与することが分かりつつあります.今後もビタミンCは,皮膚で様々な働きの発見が期待されます.

[佐藤 安訓]