ビタミンCは，薬物などを体内から取り除くのに必要なの？

生体内には存在しない医薬，農薬，食品添加物など，水には溶けにくく油に溶けやすい脂溶性の化合物を“生体異物”と総称します．このような薬物を含む“生体異物”が生体内に入ると，肝臓などの臓器でできるだけ水に溶けやすい水溶性の形になるように代謝されていきます．このような代謝系を薬物代謝系と呼びます．薬物代謝系によって水溶性の形に変えられた“生体異物”は尿などに排泄されやすくなります．この薬物代謝系の中心をなす酵素としてシトクロームP-450というタンパク質があります．ビタミンCを欠乏すると肝臓などのシトクロームP-450の量が低下します．そして，この低下が起こることで薬物などの“生体異物”の代謝能力が低下します．すなわち，ビタミンCは，シトクロームP-450を介して薬物などを体内から取り除くのに関与しています．ただし，ビタミンCの欠乏がどのようにしてシトクロームP-450の低下をもたらすかについては，現在のところは詳細な仕組みはわかっていません．

［堀尾 文彦］