やさしいビタミンCの知識

ビタミンCは尿路結石のリスク因子になるか?

尿路結石の90%以上はカルシウム結石(シュウ酸カルシウム,リン酸カルシウム,および両者の混合)が占めています.したがって,尿路結石を防ぐためには尿中のシュウ酸量を減らすことがとても重要です.

過剰なビタミンC摂取により尿へのシュウ酸排泄が増えたという研究を理由として「ビタミンCが尿路結石のリスク因子である」と騒がれたことがありましたが,現時点でその因果関係についての結論は出ていません.ただし,ビタミンCによる尿路結石の相対リスク(摂取群と非摂取群の発症率の比)が大きくなったという研究であっても,その絶対リスク(摂取群と非摂取群との発症率の差)は小さいため,ビタミンCによる発症リスクは大きくはないという考えが主流です.なぜなら,普段の食生活において葉物野菜,豆類,肉類(動物蛋白質)などを多く食べることのほうが,尿路結石の発症リスクとしては大きいからです.

確かに,からだの中ではビタミンCの最終代謝物としてシュウ酸が生成しますが,ビタミンC由来のシュウ酸が尿中に占める割合は少ないです.なぜなら,からだに吸収されたすべてのビタミンCがシュウ酸に代謝変換されるのではなく,過剰なビタミンCはそのまま尿中に排出されるからです(「ビタミンCはどうやって消化,吸収,代謝されるの?」をご覧ください).

尿中に排泄されるシュウ酸は,その約70%が外因性,つまり食事に含まれていたシュウ酸であると言われています.シュウ酸は最終代謝産物(それから先には代謝されない物質)であるため,腸で吸収されたシュウ酸はそのままの形で尿中に排出されます.

また,内因性(からだの中で作られる)のシュウ酸は,食事から吸収されたグリオキサール酸(植物に含まれる)やヒドロキシプロリン(コラーゲンを構成するアミノ酸)などからも生成します.このため,野菜や肉類の大量摂取は,シュウ酸の過剰産生を招く可能性があり,注意が必要です.

ですから,尿路結石の予防や再発防止には,尿が濃くなりすぎないように水分を十分に摂る.シュウ酸を多く含む食品の摂取を控える.食品中のシュウ酸を減らす調理法を使う.食事ではカルシウムを含む食べ物を一緒に摂る注1.などといった対策が重要です.


食事からシュウ酸を多く摂取しないための工夫

  • 野菜を下茹でする (シュウ酸は水に溶けやすいので,茹でることで減らすことができる.ただし,ビタミンCや葉酸などの栄養素も減ってしまうので茹ですぎない)
  • 食べ合わせ(食材の組み合わせ)を工夫する (カルシウムが多い食材を加えて調理したり,料理に添えたりする)
  • コーヒーや紅茶にミルクを加える (シュウ酸をカルシウムと結合させて吸収させない)
  • 脂肪を摂り過ぎない (吸収されなかった脂肪酸とカルシウムが結合することで,シュウ酸と結合すべきカルシウムが減少してしまうため)

なお,多量のビタミンCを摂取したときのシュウ酸生成量については個人差が大きいようです.尿路結石の再発率は高いので,過去に尿路結石を患ったことのある方は,念のため,過剰なビタミンCの摂取を控えるように指導されます.「尿路結石症診療ガイドライン 2013」では「ビタミンCの過剰摂取により尿中シュウ酸排泄量が増大することが予想されるが,尿路結石再発を促進するとはいえない」(エビデンスレベル:C1注2)としています.


注1 シュウ酸はカルシウムと結合すると水に溶けなくなって腸で吸収されず便に排出される.

注2 エビデンスレベルC1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診察で行ってもよい.


参考文献:
尿路結石症診療ガイドライン2013年版.金原出版(2013)
ビタミン, 87(10): 575-578 (2013).

[山本憲朗]