カルニチンは体内で合成される生理活性物質で,脂肪の燃焼に必要不可欠なものです.ヒトはカルニチンを体内で合成しますが,この合成に関与する酵素の補因子としてビタミンCが利用されます.脂肪の燃焼,カルニチンの生合成,そして酵素の補因子としてのビタミンCの役割について説明しましょう.
体内の脂肪の燃焼は,脳や赤血球以外の細胞で起き,脂肪の消化吸収から始まって細胞のミトコンドリアでの脂肪酸の酸化で終わる複雑な代謝経路によって行われます.ここでは,カルニチンが係わる経路の箇所に絞って説明します.脂肪組織に貯蔵されていた脂肪が,空腹時に脂肪酸となって細胞に取り込まれます.脂肪酸の酸化はミトコンドリアの内部で行われるので,脂肪酸はミトコンドリアの膜を通過する必要があります.このとき,脂肪酸はカルニチンが化学結合した形(アシルカルニチンと呼ばれる)でミトコンドリアに入ります.いわば,カルニチンは脂肪酸の運搬体の役割をします注1.
次に,カルニチンの生合成とビタミンCとの関係を見てみます.我われは体内でリシンとメチオニンを原材料としてカルニチンを合成することができます.その合成には数種類の酵素が関与しますが,そのうち2種類の酵素がビタミンCを補因子とします.両酵素には鉄イオンが触媒部位に存在し,2価鉄の状態で触媒機能を発揮しますが,この鉄イオンを2価鉄の状態に保つのがビタミンCの補因子としての役割です.
注1 ここで説明したカルニチンの役割は、一般の動植物油脂に含まれる長鎖脂肪酸に対するもので、中鎖脂肪酸(ココナッツ油に多く含まれる)のミトコンドリアへの取り込みにはカルニチンは要りません。
[錦見 盛光]