金属が「さびる」とは酸素(O2)と結合することです.これを金属の「酸化」といいます.酸化された金属である「さび」から酸素を取り除いて元の金属に戻すことを「還元」といい,還元する能力を持った分子のことを還元剤といいます.
酸素そのものの反応性は低いのですが,体の中で反応性の高い「活性酸素種」という危険な分子がいつも生成しています.活性酸素種には,スーパーオキシドアニオン(O2-)と呼ばれる分子や,オキシドールの商標名で知られている過酸化水素(H2O2)などが含まれます.体の構成成分である有機物も金属同様,徐々に活性酸素種によって酸化されます.例えば,細胞膜を構成する脂質はガソリンと同じ炭化水素の構造をもつので酸化されやすく,つまり燃えやすい(燃焼は速い酸化反応のこと)のです.有機物はすべて活性酸素種と反応し酸化されます.
細胞膜などが過度に酸化されると細胞が障害されます.ビタミンCは強い還元作用をもつ還元剤ですので,有害な酸化反応を防止する働きである「抗酸化作用」があります.他にも,抗酸化作用をもつ多くの物質や酵素が存在し,その能力が哺乳類で一番高いのがヒトです.ですからヒトは哺乳類の中では最も寿命が長いのです.
また,遺伝子が酸化されて別の物質に変ると遺伝情報が変わってがんになったり,老化したりと不都合なことが起こります.がんだけでなく脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化,アルツハイマー病,糖尿病合併症など,多くの病気が活性酸素種による酸化反応によって起こることが明らかにされつつあります.
[小城 勝相]